憩いの時間を過ごすA

8/15
その後も私達の関係について色々聞かれ…私は聞かれるままに、あれこれ答えてしまう。

と言っても、さすがにそれは答えられない、というような質問をしてくる訳ではなく、
2人がしてくるのは、当たり障りのない…でもちょっと照れてしまうような質問だ。

…実は、こういった話をするのは初めてで、それも何だか嬉しかった。
古乃羽さんも自身の恋の話をしてくれて…聞いていて、なぜかドキドキしてしまい、
一般に言われている「恋愛話の楽しさ」というものが、少し分かった気分だ。

そうして暫く話をしていると――
ドアをノックする音がして、明君がティーポットを載せたワゴンと共に入ってくる。

明「やぁ、遅くなって」
美加「来た来た」
古乃羽「手伝うよー」
そう言って古乃羽さんが立ち、明君がお茶を淹れるのを手伝ってくれる。

古乃羽「ん、良い香り」
明「夜だし、ハーブティーが良いと思ってね」
私の好きなお茶で、明君が時々淹れてくれるものだ。

9/15
美加「――明君、11の時にこっちに来たんだってね」
お茶を飲みながら、美加さんが明君に聞く。

明「あぁ。そうだね」
美加「それまではどこに?」
明「物部の本家だよ」
古乃羽「本家?」
明「うん。S県にあるんだ」

明君の――物部の本家が隣のS県にあることは、私も知っている。

明「母が病気で亡くなってすぐ、何かと不自由だろうからって、親子3人そこでお世話になっていたんだ」
古乃羽「へぇ…」
美加「それで…どういうツテでここに?」
明「俺もよくは知らないのだけど、堀塚と物部は昔から親交があったみたいでね」
古乃羽「…あ、何か聞いたことある気がする」
何か思い出したように、古乃羽さんが言う。

古乃羽「お婆ちゃんに聞いたのかな?むかーし、物部さんもこの町に居たとかって」

10/15
明「…あぁ、そうみたいだね。随分昔みたいだけど」
美加「そっか、なるほど…。そこで決まっていたのね」
明「え?」

美加「いやさ、明君と紗希ちゃんの出会いよ。縁もゆかりもない2人が、突然ポーンと会った訳じゃないのだなぁって」
古乃羽「…その擬音は謎だけど、縁もゆかりもあったのね」
明「あぁ、アハハ…そういうことね」

2人のやりとりに笑う明君。

…私は今の会話に、少し緊張してしまっていた。
他意のない、恋愛話の延長だったようだけど…きっと明君も緊張していたと思う。

――もし"そこ"に触れてきたら…と。

私にとって、大切な2人の友人。
嘘は付きたくない。
もし聞かれたら…素直に話をする。

そのことは明君にも言ってあり、彼もそうするべきだと言ってくれている。
でも決して良い話ではないから、こちらからはしない。

きっと、気持ちを沈ませてしまうだけだから…。

11/15
――
「それじゃ、おやすみなさーい」

時刻は1時をまわっていた。

私は紗希ちゃんと明君におやすみの挨拶をして、古乃羽と2人で客間に戻る。
そして、2つ並んだ片方のベッドにボフンとダイブ。

私「いやん、もう…お熱い2人だねぇ、まったく」
古乃羽「そうだね」
隣のベッドに座りながら、古乃羽が言う。

私「ふぅ…」
何となく溜息。
古乃羽「当てられて、恋愛したくなった?」
私「…ちょっとね」
古乃羽「よしよし」
満足そうに言ってベッドに入る古乃羽。

私「…明かり、消すね」
古乃羽「うん」
立ち上がり、パチッと電気を消して私もベッドに入る。

12/15
私「…明日、帰るんだよね」
暗く、見慣れない天井を見つめながらポツリと言う。

古乃羽「…」

大学の学祭が明後日までやっているので、その最終日には行こうかなと思い、予定では明日帰ることにしていた。

でも、何て言うか――

古乃羽「やっぱり、気になっちゃう?」

…古乃羽も、か。

私「なる」
古乃羽「私でもそうだから、美加は相当だろうね」
私「なーるよぉ〜」
そう言いながらゴロリと横を向き、古乃羽の方を見ると…古乃羽もこちらを向いていた。

古乃羽「どんなこと?」
私「んー…もう、いっぱい」

13/15
お社。
あれについての「本当の事」って何?
それを知っているという、あの女の人は何者?
名前――舞という名前と、仕草の一致は偶然?

紗希ちゃんと明君は「本当の事」を知っているの?
それは古乃羽のお婆さんの言う、「祟り」に関係したこと?
もし何かを知っているなら、話してくれない理由は?

それと、それ以外にも何かを隠している…?

古乃羽「何か隠している…」
私「うん。だって、さっきもさ…」
古乃羽「昔の話をしたときの事だよね」
私「そうそう」
古乃羽も分かっていたみたいだ。

古乃羽「奈々ちゃんの事かな、って思ったのだけど…」
私「その話かなぁ」
その事なら既に1度話しているし、あんな風に緊張した様子になることも無いと思うけど…

古乃羽「でも、奈々ちゃんの事じゃないとしたら…」
私「何かある?」
古乃羽「私ね…、明君のお父さんが亡くなった原因とか、よく知らないの」

14/15
私「あ、そうなんだ…」
古乃羽「うん。事故とも病気とも聞いていなくて」

私「どちらが先にかは?」
古乃羽「先?…あぁ、えーっと…」
記憶を探るように考え込む古乃羽。

古乃羽「お父さんが亡くなって、明君が独りになった様なことを聞いたから…奈々ちゃんが先、かな」
私「そっか…奈々ちゃんの事も知らない?」
古乃羽「うん。聞いてないと思う」

親子どちらも、死因が不明…?

いや、古乃羽が聞いていないだけ?
当時古乃羽はまだ小さかったから、亡くなった原因についてまでは言わなかった、ということも…

…無い、かなぁ。

事故とか病気とかなら、普通は言うように思える。
子供にその怖さを教え、注意させるためにも。

だから、もし言わないとしたら、それは"言えないような事"だったとか…?

15/15
古乃羽「明日、聞いてみようか」
私「…誰に?」
さすがに明君には聞けないし、紗希ちゃんにも何だか聞けない感じだ。

古乃羽「雅代さん」

私「あぁ…」
あのお婆ちゃんか。
そういえばこの家に来てから、夕食時にしか姿を見ていないな。

古乃羽「何か変なタイミングだけど、帰る前に聞いて…それで良いよね?」
私「うん」
まさか勝手に予定を変更して、もう1日くらい、こちらか杵島さんの家にお世話に…なんて事は言えない。
それだけ聞いて、真っ直ぐ帰って…他の事は後で考えよう。
…と、この時はそう思っていた。

しかし翌日、私たちは帰るわけにはいかなくなっていた。

なぜなら、古乃羽の従姉妹の唯ちゃんが、突然姿を消してしまったからだった。
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