手を合わせる@

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明君からの電話を切り、私はしばしベッドに身を沈める。

…2人に話すことを考えなきゃいけない。

古乃羽さんと美加さん。
私の大切な――数少ない、大切なお友達。
その2人に嘘を付くことなんて、絶対にしたくない。

でも…。

それ以上に、誰も傷付けたくない。
今は何とか防げたみたいだけど…必要の無いことまで話して、傷付けるようなことをしたくない。

これから――ここで何が起きようとしているのか、それが分かれば、ちゃんと判断できるのに。

それがどうしても分からない。
唯一分かっているのは、私の予知の"外"に、誰かが居るということ。

そして、何かをしようとしている。
私のことを知っている誰かが、何かを…。

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――
私「急にお呼びしてしまって、ごめんなさい」

明君と一緒に部屋に入ってきた2人に、頭を下げる。

古乃羽「良いの良いの。ね」
美加「うん。こっちから来たかったくらいだもん」
私「…ありがとう」

昨日と同じように座ってもらい、明君がお茶を出してくれる。

私「どうしても、お話しておきたい事があったの」
古乃羽「うん」
私「いくつかあって…最初に、堀塚家のことから」
美加「堀塚家?」
きっと、あのお社の話だと思ったのだろう、美加さんが意外そうな声を出す。

私「はい。それが、あのお社に関係しているので…」
美加「あ、そうなんだ。ごめんごめん」
私「いえ…。それじゃ――」

そう言って、私は話を始める。

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――
この土地に古くから住んでいる家には、ある特別な事象があった。

それは、霊感を持つ可能性が極めて高いという事。

それはその家の「女性」に限られ、目覚める可能性があるのは成人するまでであり、
また、血を分けた兄弟が居る場合にはその可能性は低くなるか、家によってはゼロになるというものだった。

霊感の"型"は家ごとに決まっており、大昔この土地には様々な霊能力者が居たが、
時が経つにつれ、この土地を離れる者や逆に外から来た者が増えていき、
やがてこの土地に歴史を持つ家は、今では2つのみ――堀塚家と杵島家のみとなっていた。

堀塚家は予知の力を持ち、ある者は数年先の事まで知ることができた。
杵島家は霊視の力を持ち、ある者は遥か千里先まで見渡す事ができた――。

私「――古乃羽さんはこの事、ご存知でしたか?」
一旦話を切り、聞いてみる。

古乃羽「杵島の事はこの前聞いたばかりで、美加にも話したけど…」
うんうん、と横で頷く美加さん。

古乃羽「それ以外は知らなかったな」
私「そうでしたか…」

堀塚と杵島では、やはり事情が少し違うのだろう。
この堀塚家とは…。

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美加「でも、予知ってスゴイね。紗希ちゃんも分かっちゃうの?」
私「はい、少し…」
美加「へぇ〜」
羨ましそうな声を出す美加さん。

私「でも、制約も多いのです」
美加「制約?」
私「予知した事は、必ずその通りになる訳ではないのです…」

――予知は外れる事がある。
…いや、"外す事が出来る"と言った方が良いのかもしれない。
ある条件を満たすと、外れる可能性が生まれるのだ。

その条件とは、「自身が干渉すること」。
私が何らかの干渉をすることで、予知した事が絶対では無くなる…。

私「例えば…、これからダイエットをしようという人が居て、私がその人に「あなたは1年後に5キロ痩せています」と言ったとします」
美加「うん」
私「でもその人が「予知で分かっているなら」と言って何もしなかったら、その人が痩せる事はありません」
美加「…そりゃ、そうね」

そう。当たり前の事だ。

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私「私が直接口を挟んだり、自ら行動を起こしたりすると、外れる可能性があるのです」
2人を見つめながら、私は改めて言う。
大切な事だから。
今、伝えておかなければならない事だから。

美加「ってことはさ。予知しても、自分では何も出来ないってこと?」
私「そういう訳でもありません。例えば…今日は1日中、晴れますね」
美加「晴れ?…あ、なるほど」

天気のように、私が何を言っても変わらないものは存在する。
私1人の力では、どうにもならない事も…。

古乃羽「あ、だから…もしかしてこの前、明君が傘を持っていたのって…」
明「そう、あの時ね。紗希が「雨が降る」って言うからさ」

古乃羽さんが明君に会った日のことだろう。
あの時は、2人が林の道で再会する事も、私には分かっていた。

明「予知した事がその通りになるためには、何もしないことが一番でね」
明君が私の代わりに説明をしてくれる。

明「でも介在する必要がある場合には、直接ではなく、第三者を立てるのが良いんだ」

明君はいつでも私の力になってくれる。
いつでも、どんな時でも。
…どんな相手でも。

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――
紗希ちゃんと明君の話を聞きながら、昔、この村で起きたことが分かってくる。

古乃羽「だから、平気だったのね」
明「…ん?」
古乃羽も分かったみたいだ。

古乃羽「飢饉。天明の大飢饉を逃れた理由」
明「あぁ…。そういうことさ」
逃れた理由は、予知のお陰だろう。
でも、それだけじゃまだ解決しない。

私「飢饉が来る事を予知していて、だから食糧を貯めこんでいて。…でも、それを守るためにお社?」
どうにもこのことがピンと来ない。お社で、どうやって?

明「あのお社は…見張りだったんだ」
私「見張り?あれで?」
明「あれを使っていたのは、杵島家なんだよ」

古乃羽「え?」

杵島家?
あ、そうか――

私「千里眼?」
明「そう。それで…見張っていたんだ」

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古乃羽「そっかぁ。ビックリした…」

あれこれ調べていたけど、結局あのお社は古乃羽の――杵島の家にまつわるものだった訳だ。

古乃羽「お婆ちゃんも知らなかったみたいだしなぁ…」
明「ずっと昔の事だからね」
お婆ちゃん。古乃羽のお婆さん。
…あ。

私「じゃあ、あれは…何なのかな?」
古乃羽「ん?」
私「ほら、祟りのこと」
古乃羽「あ、そうだ」
明「祟り?」
何の事かと明君が聞いてくる。
まぁ、気になるフレーズではあるだろう。

古乃羽「お婆ちゃんが小さい頃に、ひいお婆ちゃんに言われたらしいの。あのお社に近付くと祟りが起きる、って」

明「えっ?」
一瞬驚いた表情をして、紗希ちゃんと顔をあわせる明君。

明「それは…お社が古くて危ないから、近寄らないように…とか?」
古乃羽のお婆さんと同じ考えを言う明君。
古乃羽「うん。多分…そういう意味だと思う」

手を合わせるAへ続く
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