罪の意識を感じる@

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10月の終わり。
大分寒さも増してきた頃、うちの大学では学園祭が行われていた。

何のサークルにも入っていない俺は学園祭では"お客側"で、古乃羽が法事で田舎に帰っていることもあり、朝から1人で友達の催し物などを見て回っていた。

やがて昼時になり、同じ学科の友達がやっている露店で焼きソバを買った俺は、
キャンバスの外れまで行き、ベンチに腰掛けて昼飯をいただくことにする。
そしてパックの蓋が意味を成さないくらい超大盛りに盛られた焼きソバに挑もうとしたとき、聞きなれた声が聞こえてくる。

「おーい、雨月ー」

北上だ。
俺と同じようにパックを持ってこちらにやってくる。

…あれはたこ焼きか。
こちらに負けないくらい大量に盛られているな。

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北上「2人は鮎川さんの田舎か」

隣に座りながら、たこ焼きが言う。

俺「あぁ。この前から行っているな」
北上「せっかくの学祭なのになぁ…」

残念そうなたこ焼き。
神尾さんと一緒に学祭を楽しみたいと思っていたのだろう。

俺「法事じゃ仕方ないだろ」
焼きソバを頬張りながら答える。
神尾さんの家の法事って訳では無いので、何の理由にもなっていないが。

北上「まぁなぁ…」

なぜかそれで納得した様子のたこ焼…くどいか。北上。
相変わらず変な奴だなと思って見てみると、北上は俺の焼きソバをジッと見つめている。

俺「…俺の昼飯に何か用か?」
北上「良い盛りっぷりだな」
俺「サービスだとさ。旨いぞ、これ」
北上「みたいだな」

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北上「俺、実はさ、ちょっと大きな悩みを抱えていてな」
俺「ほぉ」
何だ、何か相談事か。

北上「昼飯を焼きソバにするか、たこ焼きにするか、と」
俺「…それは大変だな」
…まぁ、そんなとこか。

北上「そこに丁度お前が通りかかってな」
俺「…」
北上「颯爽と山盛りの焼きソバを買っていった訳だ」
俺「…」
北上「そして俺は今、同じく山盛りのたこ焼きを買ってここに居る――」
俺「分かった分かった」

お互いのものを仲良く半分分け合い、並んで昼飯を食べる。
傍目には、男同士で気持ち悪いとか思われそうだ。

北上「――ふぅ。で、本題だ」
ものの数分でそれらを食い尽くしたところで、北上が言う。

俺「本題?」
北上「本当の悩みはこっちなんだよ」
俺「へぇ…」
北上「俺は今、世の多くの人間が悩むであろう、人生の命題とも言える問題を抱えていてな」
俺「…何だよ」
北上「愛だよ、愛」

…またか。

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北上「お前今、またか、と思ったろ」
俺「すごいな、鋭いじゃないか」
北上「俺も成長しているのさ…」

色々ツッコミたいが、まぁ良いか。

北上「話は他でもない、神尾さんのことなんだ」

俺が「またか」と思い、北上もそう思うであろうと想像できるくらい、この話はよく聞いている。
このまま友達としているだけでいいのか、友達から恋人になるきっかけ、条件、男女の友情云々。
まぁ確かに、今の関係を考えると悩みは尽きないだろうなとは思う。

少し前に、俺−古乃羽−神尾さんの繋がりを使って、古乃羽から北上を推すようにお願いしようかと提案したことがある。
だが、北上はスパッとそれを断ってきた。
「何だか姑息で嫌だ」と言って。

自分の力で何とかしたいらしく、なかなか男らしいなと思ったのだが…
最近、悩み事の相談回数が増えているのも事実だったりする。

俺「で、今日は何かね?北上君」
北上「今日のは、いつもよりヤバ目なんだ」
俺「ほぉ」

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相談の内容は、神尾さんの"人気"についてだった。

同じ学科、違う学科問わず、同期は勿論、先輩や後輩、教授や助教授。
彼女の性格の良さと顔の広さ、「現在フリー」というステータスもあって、あらゆる男性(女性も、らしい)が狙っているという話だ。

しかしまぁ…これについての答えはもう出ている。
それは北上も分かっているだろう。

誰が彼女に近付こうとも、北上がするべきことは変わらない。
問題は彼女の気持ち1つだ。
ライバルが居たからダメでしたというのなら、元々上手くいくものでもないだろうし、
先を越されるという心配ならむしろ逆で、今最も彼女に"近い"のは北上に間違いない。

俺「神尾さんの好みは置いておいて、相性ならピッタリだと思うけどな」
北上「あぁ。自分で言うのも何だが、俺もそう思っている」

本当に、自分で言うのも何だがな事だ。

北上「お前と鮎川さんもピッタリだよな。霊感もあるし」
俺「おかげさまで」
古乃羽と出会えたのは北上のお陰だ。その点はとても感謝している。

北上「しかしお前が霊感持ちとは、ずっと気付かなかったなぁ」
それなりに長い付き合いの俺たち。だが…

俺「それだけど、古乃羽と会うまでは何もなかったと思うんだ」
北上「ん?」

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北上「霊感のことか?」
俺「そ。俺も古乃羽も、お互いに会うまで持ってなかったと思うよ」
北上「へぇ…何でだ?」

俺「姉貴に聞いたんだが――」
…我ながら、俺の話には姉貴の受け売りが多い。

俺「霊感の有無には素質があって、俺たちはきっかけを待っている状態だったみたいでな」
北上「ほぉ」
俺「で、そのきっかけとなるもので一番多いのが"出会い"らしく、それで…ってことらしいよ」
北上「…運命の出会いってやつか」
俺「そういう言い方もあるかな?」
運命というのも、ちょっと仰々しい気がするが。

北上「でも、お前はお姉さんの事もあるから何となく分かるけど、鮎川さんもなんだな」
俺「そういった素質みたいのは、誰にでもあるんじゃないか?」
北上「俺にはなさそうだけどな…」
俺「…だな」

実は姉貴からは、古乃羽は”血筋”のため、俺より素質があったということも聞いていた。
しかしそれを北上に話すのは止めておいた。
たとえ相手が神尾さんでも、話すつもりはない。

彼女の秘密――というと大げさかもしれないが、その家の秘密めいたことを勝手に話すことに抵抗があるからだ。
それと、ひょっとすると古乃羽自身がその事を知らない可能性もある。
…いや、彼女の様子からすると恐らく知らないだろう。

それを何故姉貴が知っているのか、不思議ではあるが…
少なくとも古乃羽が自分から話してくるまで、この事は黙っていようと思っている。

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俺「さ、ってと」
話が終わったところで、俺はベンチから立ち上がる。

北上「お帰りか?」
俺「そうだなぁ…目ぼしいところは大体行ったし。そっちは?」
北上「俺はもうちょっと顔を出していくよ」
神尾さんに負けず劣らず、北上も知り合いが多い。

北上「明日も来るか?」
よいしょと立ち上がりながら北上が言う。
学祭は明後日の金曜までやっている訳で、こいつもきっと暇なのだろうが…

俺「あー…明日からちょっと遠出の予定でな」
北上「ほぉ?どこに?」
俺「A県」
北上「…そらまた遠いな。遥か北まで1人旅か?」
俺「いや――」

実は、姉貴に呼ばれたのだ。
「明日の夜、迎えに来てほしい」と。

昨日の晩に連絡が来て、わざわざ迎えが必要な理由も、なぜそこに居るのかも、一応聞いてみたが説明は無かった。
まぁ、実は何となく察しはついているのだが…行った先で話を聞けば良いと、俺はこの時そう考えていた。

…それと頭の片隅で、古乃羽の故郷とは逆方向だなと、何となく思っていた。

罪の意識を感じるAへ続く
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